国宝が一番多い県は東京|京都・奈良との違いと国宝がない県

国宝が一番多い都道府県は東京都で、293件あります。2位は京都府の242件、3位は奈良県の208件。この3都府県で全国1,149件の約65%を占めます(文化庁、2026年9月1日現在)。ただし東京の国宝は291件が美術工芸品で、建物の国宝は2件だけです。建物で数えれば奈良が64件で1位、仏像(彫刻)も奈良が全国の半分以上を持っています。「一番多い県」は、何を数えるかで答えが変わります。

比べる点東京都京都府奈良県
国宝の総数(順位)293件(1位)242件(2位)208件(3位)
美術工芸品291件188件144件
建造物2件2棟54件81棟64件71棟
全国1位の種別絵画69・工芸93・書跡91・考古17古文書27彫刻76・建造物64件
多い種別(上位2つ)工芸93・書跡91書跡56・建造物54件彫刻76・建造物64件
代表的な物件・所蔵先東京国立博物館(国宝90件)・迎賓館赤坂離宮平等院鳳凰堂興福寺の八部衆立像
旅先としての見方1か所でまとめて会える。出ている作品は時期で変わる寺社の建物と古文書・書跡をまとめて見れる仏像と古い建物を現地で見れる

件数は文化庁の都道府県別指定件数一覧(2026年9月1日現在)。東京国立博物館の90件は同館の公表(2026年4月現在)。

国宝の多い都道府県ランキング(上位10)

文化庁の都道府県別の一覧から、国宝の件数が多い順に10都府県を抜き出しました。建造物は「件」と「棟」を並べています。件は指定の件名の数、棟は建物の数。1件に何棟も含む指定があるので、建物の多さは両方を見ないと比べられません。

順位都府県国宝の件数うち美術工芸品うち建造物(件・棟)
1東京都2932912件・2棟
2京都府24218854件・81棟
3奈良県20814464件・71棟
4大阪府63585件・8棟
5滋賀県573423件・24棟
6和歌山県36297件・7棟
7兵庫県211011件・14棟
8神奈川県19181件・1棟
8広島県19127件・12棟
10栃木県17107件・10棟

3位の奈良(208件)と4位の大阪(63件)の間には、3倍以上の開きがあります。県別の国宝は、上位3都府県とそれ以外の2つに分けて見ると分かりやすいです。

4位から6位の3府県にも、それぞれ色があります。大阪は63件のうち58件が美術工芸品で、工芸22件・書跡15件・絵画11件と、東京に近い形です。滋賀は建物が23件あり、奈良・京都に次ぐ全国3位。書跡12件・古文書9件と、書物や文書の国宝も目立ちます。和歌山は36件のうち29件が美術工芸品で、建物は7件でした。

偏りは地域にも出ています。近畿の2府4県(京都・奈良・大阪・滋賀・和歌山・兵庫)を合わせると626件で、全国の約55%。京都と滋賀にまたがる琵琶湖疏水施設は両府県で数えられているので、その1件を引いた数です。

5位から10位には、城や神社の建物で名前が知られた県が入っています。兵庫の姫路城大天守、滋賀の彦根城天守、広島の厳島神社、栃木の日光東照宮の陽明門は、どれも国宝の建造物です。兵庫は建物11件が美術工芸品10件を上回っていて、上位10の中では建物のほうが多い唯一の県でした。

広島の国宝の建物を代表する厳島神社が、なぜ海の上に建っているのかは別の記事で扱いました。

東京が1位なのはなぜか

東京の293件のうち、291件は絵画・工芸・書跡などの美術工芸品です。建物の国宝は、明治42年(1909年)に皇太子の住まいとして建てられた迎賓館赤坂離宮(旧東宮御所)と、東村山市にある正福寺地蔵堂の2件しかありません。正福寺地蔵堂は、見つかった墨書から1407年の建立と分かっている仏堂です。

数を押し上げているのは東京国立博物館です。同館は国宝90件を持っていると公表していて(2026年4月現在)、東京の国宝のおよそ3割が1館に集まっている計算になります。数字の時点が文化庁の一覧(2026年9月1日現在)と少しずれるので、割合は丸めて読んでください。

美術工芸品は動かせるので、県別の数え方にも癖があります。文化庁の一覧では、美術工芸品の県別の件数は平成29年(2017年)9月現在で把握している件数を基準にしているそうです。建物は土地に固定されていますが、絵巻や茶碗は持ち主のもとを離れて動くこともあります。県別の美術工芸品の数字は、基準にした時点の把握にもとづく集計として読むのが無難でしょう。

東京の国宝の多さは、「東京に昔からある国宝」より「東京で見る機会がある国宝」と考えたほうが実態に近いと思います。ただ、所蔵している件数と、その日に展示室で見れる件数は別の話です。目当ての作品があるなら、出かける前に館の展示の予定を確かめてください。

東京・京都・奈良の国宝の中身の違い

種別ごとに全国1位の都府県を並べると、「一番多い県」は種別の数だけ答えがあると分かります。

よく聞かれる「京都と奈良はどっちが多いか」には、総数なら京都と答えられます。京都242件に対して奈良208件で、差は34件。その差はほぼ美術工芸品(京都188件、奈良144件)から来ていて、建物の件数では奈良が10件上回ります。

美術工芸品(絵画・彫刻・工芸・書跡・古文書)

東京は、絵画69件(全国167件の約41%)、工芸93件(254件の約37%)、書跡91件(236件の約39%)、考古資料17件で1位です。絵巻や屏風、茶碗、経典や書状のように、持ち運べて博物館に収まる作品が東京に厚く集まっています。

奈良は彫刻が76件で、全国142件の半分を超えます。国宝の彫刻は、2件に1件以上が奈良にある計算です。1件に何躯も含む指定もあり、興福寺の八部衆立像は8躯まとめて1件の国宝になっています。

京都は古文書27件(全国63件の約43%)で1位です。書跡56件、絵画44件、彫刻42件、古文書27件と、4つの種別に数十件ずつあるのが京都の特徴でした。工芸は15件、考古資料は4件と少なめです。

仏像の国宝を見たいなら奈良、絵巻や書を見たいなら東京。書や文書から仏像・絵画まで幅広く見たいなら京都、という選び分けが件数から素直に出てきます。

建造物(件と棟の違い)

建物の国宝は全国で233件303棟あります。件数で並べると奈良64件、京都54件、滋賀23件の順です。ところが棟数では京都81棟、奈良71棟と順位が入れ替わります。1件あたりの棟数は京都が約1.5棟、奈良が約1.1棟で、京都は1つの指定に何棟もまとめて入っている例が多いと読めます。

奈良・京都・滋賀の3府県だけで、全国の建物の国宝の約6割。京都の件数には、滋賀と二重に数えている琵琶湖疏水施設も入っています。京都では平等院鳳凰堂が国宝です。同じ京都でよく知られた金閣寺が国宝に入っていないとされる理由は、こちらの記事にまとめました。

建物の国宝を目当てに回るなら、件数で1位の奈良が第一候補です。ただ、1日で何棟見れるかを優先するなら、京都の寺社を選ぶほうが効率は上がります。

城の建物では、よく言われる「国宝5城」は天守が国宝の城のことです。京都の二条城も、二の丸御殿の遠侍・大広間・黒書院・白書院など6棟が国宝に指定されていて、京都の件数に入っています。天守が国宝の5城と現存天守12城の違いは別の記事で比べています。

国宝が少ない県・国宝がない県

国宝が1件もないのは徳島県と宮崎県の2県です(2026年9月1日現在)。少ない県を中身で見ると、建物だけの県と美術工芸品だけの県に分かれます。

型県と件数
国宝が0件徳島県・宮崎県
建物の国宝だけ群馬県1件3棟、富山県2件5棟、熊本県2件6棟、長崎県3件3棟
美術工芸品の国宝だけ福岡県12件、青森県3件、北海道2件、秋田県1件、新潟県1件、佐賀県1件など

群馬の1件は旧富岡製糸場で、西置繭所・東置繭所・繰糸所の3棟が国宝です。群馬で国宝を見る場所は、ここ1か所に絞られます。

逆に福岡は12件の国宝がありながら、建物の国宝はありません。内訳は工芸5件、考古資料5件、書跡と古文書が1件ずつ。国宝の件数が多めの県でも、建物目当てで旅程を組むと空振りします。

沖縄は歴史資料1件と建造物1件(5棟)の計2件で、どちらの型にも入りません。

地方ごとに足すと、少なさがもっとはっきりします。九州・沖縄の8県を合わせても26件、東北6県を合わせても28件です。どちらも東京1都の1割に届きません。国宝の実物を見る旅を組むなら、東北や九州は1県の中で完結させず、重要文化財や世界遺産と組み合わせて行き先を決めるほうが現実的です。

国宝がない県に、国の文化財がないわけではありません。同じ一覧では、徳島の重要文化財は53件、宮崎は26件あります。国宝は重要文化財の中からさらに選ばれるので、0件の県でも重要文化財の建物や仏像には会えます。国宝と重要文化財の線引きは別の記事にまとめました。

県別の件数を読むときの注意

国宝の件数を調べると、サイトによって東京や全国の数字が少しずつ違います。国宝の新しい指定は今も続いていて、いつの時点の数字かで件数が変わります。比べるときは、まず「何年何月現在」の数字かを見てください。

全国の合計1,149件は、琵琶湖疏水施設を1件として数えた数です。文化庁の一覧では、琵琶湖疏水施設は京都と滋賀の両方で数えているため、各県を足した数と合計は一致しないとしています。実際に足すと1,150件で、合計より1件多くなります。

所有者が分からないものや、戦後に連合国側へ出したまま戻っていないものは、文化庁の一覧では「補遺」として別に扱われ、県には振り分けられません。国宝で補遺にあたるものは今はありません。

もう1つ、重要文化財の件数は国宝を含んだ数です。国宝と重要文化財を足して「文化財の数」にすると二重に数えてしまうので、県どうしを比べるときは気をつけてください。

参考