源氏物語絵巻の所蔵は徳川美術館と五島美術館|本物が見れる時期

国宝の源氏物語絵巻(げんじものがたりえまき)は、名古屋の徳川美術館(徳川本)が絵15段・詞書16段を、東京・世田谷の五島美術館(五島本)が絵4面・詞書9面を分けて所蔵しています。どちらも1952年に国宝に指定された平安時代の作品で、いつ行っても見れる常設展示はありません。徳川美術館は毎年11月下旬に数場面を選んで、五島美術館は春の大型連休のころに1週間ほど公開するのが基本の形です。

2026年11月は京都国立博物館の特別展と徳川美術館の特別公開が重なり、京都と名古屋で別々の場面を見れます。

作品所蔵館(所在地)公開の形公開時期(2026年11月時点)読み方
源氏物語絵巻(徳川本)絵15段・詞書16段徳川美術館(愛知県名古屋市東区)常設なし。毎年11月下旬に数場面を特別公開2026年は11月14日〜29日に横笛・宿木(二)げんじものがたりえまき
源氏物語絵巻(五島本)絵4面・詞書9面五島美術館(東京都世田谷区上野毛)常設なし。館内で短期の展示毎年春の大型連休のころに1週間ほどの予定げんじものがたりえまき

源氏物語絵巻の所蔵先は徳川美術館と五島美術館の2館

文化庁の文化遺産オンラインを見ると、源氏物語絵巻の国宝は2件に分かれています。

1件目は「紙本著色源氏物語絵巻(絵十五段、詞十六段)」。所有者は公益財団法人徳川黎明会で、置かれているのは名古屋市東区の徳川美術館です。2件目は「紙本著色源氏物語絵巻〈絵四面/詞九面〉」で、所有者は東急株式会社、所在は世田谷区上野毛の五島美術館になっています。指定日はどちらも1952年3月29日でした。

2件とも平安時代(12世紀)の作で、作者は不明です。絵は藤原隆能の筆と伝わります。

同じ絵巻がなぜ2館にあるのか。五島美術館の作品案内によると、江戸時代の初めには3巻が尾張徳川家に、1巻が阿波の蜂須賀家に伝わっていたそうです。それより前の持ち主は分かっていません。蜂須賀家の1巻は江戸時代の末に家の外へ出て、いまは五島美術館が持っています。尾張徳川家に伝わった3巻の分が、いまの徳川美術館の所蔵です。

量で比べると、絵の数は徳川本が15、五島本が4。所蔵先の答えは「2館」でも、見られる場面の数はほぼ4対1です。初めて本物を見たいなら、名古屋の秋の公開に合わせて予定を組むのが近道だと考えます。

分かれて所蔵される国宝では、曜変天目の3碗も同じように館ごとの公開を追う必要があり、曜変天目の所蔵先と公開時期を別の記事にまとめました。

源氏物語絵巻は何場面残っているか|絵と詞書の内訳

絵は2館を合わせて19場面が残っています。五島美術館の案内では、物語54帖の各帖から1〜3場面を選んで絵にしたと説明されています。作られたのは物語が成立してからおよそ150年後の12世紀だそうで、今あるのはそのうちの一部です。

徳川美術館が2025年の特別展で出した出品リストを見ると、徳川本の絵は蓬生、関屋、柏木(一)〜(三)、横笛、竹河(一)(二)、橋姫、早蕨、宿木(一)〜(三)、東屋(一)(二)の15場面。五島本は鈴虫(一)(二)、夕霧、御法の4場面で、それぞれに詞書が2〜3面付いています。

展覧会の告知には、帖の名前で出る場面が書かれます。2026年の秋なら橋姫、横笛、宿木(二)(三)です。目当ての場面を先に決めておくと、毎年の告知を追いやすくなります。

形は2館で違います。

徳川本は、徳川美術館の説明によると、もとは巻物で、1932年に保存のため額装に改められました。その後、額装が本紙にかける負担を減らすために巻物へ戻し、1場面ごとに絵と詞書を1巻に仕立て直しています。愛知県の観光サイトの2021年の記事は、2016年から5年にわたる修復があったと紹介していました。

五島本も1932年に額装に改められたと、五島美術館は説明しています。2025年の出品リストでも「詞二面・絵一面」のように面の単位で数えられていました。

国宝の2件とは別に、絵巻から切り離された断片(断簡)も残っています。2025年の出品リストには、東京国立博物館が持つ若紫の絵の断簡や、書芸文化院(春敬記念書道文庫)などが持つ詞書の断簡が並んでいました。リストで国宝と記されているのは徳川本と五島本の場面だけで、断簡には付いていません。

源氏物語絵巻の本物が見れる時期|常設ではなく期間限定

徳川美術館の公開は、毎年秋の11月下旬です。

館の2026年の特別公開のページには、毎年11月下旬に絵巻から数場面を選んで特別公開すると書かれています。愛知県の観光サイトの2021年の記事でも、11月から12月ごろに2場面だけを期間限定で公開していると紹介されていました。2026年は11月14日から29日に、横笛と宿木(二)の2場面です(2026年11月時点)。

節目の年には大きな展示もあります。2021年は修復の完了を記念した特別公開があり、柏木の3場面が前期と後期に分けて出ています。開館90周年の2025年は、11月15日から12月7日の特別展で五島本や断簡まで集め、10年ぶりに名古屋で一堂に並べました。こうした年を除くと、名古屋で見れるのは11月下旬に選ばれる数場面と考えておけば外しません。

五島美術館の公開は、春の大型連休のころです。

館のコレクション案内には、毎年その時期に1週間ほど展示する予定と書かれています(2026年11月時点)。2026年11月に開いている「室町ごころの風景」(12月6日まで)と、次の「茶道具取合せ展」は絵巻の展示ではありません。東京で見たいなら、春の会期を館の予定表で早めに押さえるのが確実です。

本物かどうかは、展示の作品名で見分けられます。原本には「国宝」と付き、時代は平安時代です。徳川美術館の2025年の特別展では、1999年から2005年に描かれた平成の復元模写も原本と一緒に並びました。復元模写は作品名に「復元模写」とあり、時代は「現代」と書かれています。どちらを見ているのか、展示の札で確かめてください。

本物を追う順番は、まず名古屋の秋、次に東京の春。2館の時期がずれているので、半年あければ両方を見れます。

同じ国宝の絵巻でも、鳥獣戯画は寺の所蔵と展覧会での公開の関係が違います。鳥獣戯画の本物が見れる場所は別の記事にまとめました。

2026年秋に源氏物語絵巻を見れる場所|京博と徳川美術館

京都国立博物館の特別展「源氏物語 王朝のかがやき」は、2026年10月6日から11月29日まで平成知新館で開かれています(2026年11月時点)。国宝の源氏物語絵巻は徳川本から2場面が出ていて、橋姫が11月3日から15日、宿木(三)が11月17日から29日。どちらも京都会場だけの展示です。展覧会は2027年1月19日から3月14日に東京国立博物館へ巡回しますが、この2場面は東京には行きません。

名古屋では、徳川美術館の特別公開「横笛・宿木(二)」が11月14日から29日まで。京都と会期の終わりが同じ29日です。

京都国立博物館は、前期・後期の区分とは別に作品ごとの展示替えがあると案内しています。絵巻も場面ごとに期間が違うので、行く日がどの場面に当たるかは作品リストの日付で確かめてください。

2026年11月京都国立博物館徳川美術館
3日〜13日(9日は休館)橋姫公開前
14日・15日橋姫横笛・宿木(二)
16日(月)休館休館
17日〜23日宿木(三)横笛・宿木(二)
24日(火)休館休館
25日〜29日宿木(三)横笛・宿木(二)

休館日は2館とも月曜で、祝日の23日は開いて翌24日が休みです(2026年11月時点)。休みが重なるので、16日と24日はどちらの館でも絵巻を見られません。

狙うなら11月17日以降です。京都で宿木(三)、名古屋で宿木(二)を見れば、同じ帖の続きの場面を2館で見比べられます。2026年の秋にそれができるのは、この2週間だけです。

京都と名古屋を続けて回るなら

京都と名古屋は新幹線で行き来できます。会期の終わりが同じ29日なので、どちらを先にしても構いません。日程を組むときは、2館とも休む16日と24日を外してください。

絵巻の前後に京都で時間があれば、国宝の絵をもう1点追う手もあります。風神雷神図屏風の本物の置き場所と建仁寺の複製の違いを別の記事に書きました。秋の京都では非公開文化財の特別公開も開かれていて、寺の国宝を足す組み方もできます。1日足せるなら、京都の世界遺産を一日で回る順番の記事が使えます。

参考